情報共有で描く
第11話《③学習編》ビジョンが明確に伝わるメッセージ力

恵賀くんは社長室をゆっくりと歩き回りながら、大和社長を一瞥し、
「"社会"とは何を対象にしているのか。それを"貢献"するとはどういうことなのか?」
「"創造"とはどういう活動を指すのか。それが"発展"するとはどうなることなのか?」
と質問形式で語ります。
「勿体ぶるんじゃないよ」と言わんばかりに、大きく息を吐いた大和社長。
「まぁ、慌てなさんな」と言葉には出さずに、立ち止まった恵賀くん。
「社長が仰る一つひとつの言葉に理解ができても、その定義や認識は社員それぞれが違っています。聞き慣れたキーワードを並べても、聴いている方の解釈は異なってしまうのが現実なのです。ですから......」と、ホワイトボードを指さし、
「こうしてそれぞれのメッセージを示すモチーフを見つけ出し、絵を用いてビジュアル化することで、皆には同じ概念が伝わる。未知なる将来像にあきらかな方向性が示されるとさえいえましょう。したがって......」
恵賀くんは社長の手を取って、「こちらへ」と自分の職場まで案内しました。
「もうすでに当方が解釈した絵を職場で配布しております。ほら、ご覧のようにメンバーが互いに同じ価値観を共有しながら、話し合いが進んでいるでしょう」
確かに社員の対話の中には、恵賀くんの示したビジュアルが浮かんでいるように思えます。
「ほほう」と大和社長は唸りました。
「......で、いつこの絵を描いて、みんなと共有したのかね? なんだか時間の流れにつじつまが合わんが......」
という疑問などお構いなしに、恵賀くんは続けました。
「このような状態になれば、トップからのメッセージが共有化され、組織目標と個人活動のベクトルが合っていきます。こうした全社員の目標感を合わせることにこそ、経営トップとしての醍醐味があるとは思われませんか?」
恵賀くんはそう言い切ると、唇を細めて『ストレンジャー』の旋律を吹こうとしたその時です。
「よぉ〜く、わかった。では早速、君に辞令を与えよう!」
と、得意の口笛を遮るかのように、大和社長は恵賀くんの肩に手をやりました。
「えっ、え、え〜!」と大いに動揺する恵賀くんは、急なプレッシャーに弱いようです。
さて次回、恵賀くんの身に何が起こるのでしょうか!
第11話おわり
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